2017 3月11日 「平和について思うひととき311」
「平和について日常について、それからリアルについて思ったこと」
私たちは、戦争の愚かしさを描きながら平和について考える公演を重ねているが、近年は震災の話もとりあげるようになった。
今回、3月11日に震災をテーマにした作品を発表する重みは、我々に予想を上回る緊張を生んだ。稽古の時にはなかったミスが多発した。感情が制御できなくなってしまいがちだったように思う。もともと読みながら泣いてしまう悪い癖があるのだが「残されたカレーライス」では、孫を演じるK嬢の熱演にひっぱられ、祖母役の私は舞台でハンカチを使うはめに陥った。
メモリアルデーの、震災発生に近い時間帯の上演というだけで、リアルな感情が生まれてしまったようだ。実際には遭っていない津波、行ったこともない避難所、それらが現実感をもって迫ってきた。それを客席まで届けられたのなら良いのだけれど。
両親を失った少年にとっての母親の作るカレー。なんてことのない日常が、実は奇跡的なかけがえのないものなのだと確認すること。天災も戦争も、どちらも日常を破壊して、さっきまでの当然がすべて贅沢になる。贅沢は敵とまで言われてしまう時代が少し前にあった。そして、そんな日は明日やってこないとも限らない。
定番の公演だが、個人的にはいつになく、絵空事でない非日常を強く意識するものとなった。これもまたひとつの平和について思うひと時なのだろう。あのとき、演じていたみんなは、観客の皆さんは、どんなひと時をすごされただろうか。
(文責・齊藤浩子)